ジャズ的リハーモナイズ伴奏の理論的解説
以前のブログ解説:セッション定番曲『Isn’t She Lovely』で使える4つのバッキングアプローチ解説の中から、(4) ジャズ的リハーモナイズ伴奏の理論をさらに深く掘り下げて解説します。
基本的なリズム奏法は、ジャズのいわゆる4つ切りに近いアプローチを採用しています。
こちらが譜面(タブ譜)です。
※Arrangement & Tablature © 2025 Yuta Tamura (Vitamin Studio)
Original Music: “Isn’t She Lovely?” (Stevie Wonder)
リハーモナイズとは
このアプローチでは、元のコード進行を、より**複雑で色彩豊かな響きに解釈し直す「リハーモナイズ」**を施します。
意図と効果
この高度なハーモニーは、楽曲にスリリングな演出を加え、曲全体の雰囲気をガラッと変えることができます。これらのコード変更は音楽理論のルールに基づいて行われるため、元のコードの延長線上で機能し、原曲のメロディはそのままで違和感なく機能します。
ここでは、主に以下の専門的な理論が用いられています。
- 裏コード(♭5サブスティテューション): ターゲットのコードへ進むドミナントコードの代理として、そのドミナントから増4度(減5度)離れたセブンスコードを挿入します。例
- オルタードテンション: 解決先のコード(例: C#m7)に向かうドミナントコード(例: G#7)に、#5や♭9といった緊張感の非常に高いテンションノートを加える手法です。
- ドミナントモーションの多用: ターゲットのコードに対し、その5度上のセブンスコード(V7)を設置して解決感を強めます(例: C#mに行く前のG#7)。さらに、これをII-V-Iという進行に拡張して組み込むことで、より豊かなハーモニー展開を作ります。
- コードの分解をして演奏する→ハーモナイズド・ウォーキングベースライン:通常のウォーキングベースラインは、主にベース楽器(コントラバスやエレキベース)が、コードのルート音を基盤に、コードトーンやパッシングトーン(経過音)を組み合わせて、1拍ずつ(またはそれに近いリズムで)滑らかに音を繋いでいくベースラインを指します。
そのウォーキングベースの動きに合わせて、ギターやピアノなどのコード楽器が、各ベース音の上にそのkeyに生じたダイアトニックコードを基本に乗せていく奏法です。
各小節の具体的なアプローチ
ここでは、『Isn’t She Lovely』の譜面における具体的なリハーモナイズの例を見ていきましょう。
- 2小節目: コードを分解しています。基本的には、そのコードのキーに基づいたダイアトニックコードを使用しています。(ハーモナイズド・ウォーキングベースライン)
- 3小節目: 4拍目で次のIであるEMaj9に向かう、V7の裏コードである**F7(9)(♭5サブスティテューション)**を使っています。ちなみに3小節目は基本的にはA/B, Bsus4であるため、1拍目からV7を使うことはできません。
- 4小節目: 元のコードはEのままですが、5小節目に向かうC#m7をIとしたときにV7が使えると考え、さらにそのII→Vと、いわゆるII-V-Iという形から、そのIIを裏コードを使っています。かなり「寄り道」をしている形です。
- 6小節目: F#のコードに**#11を入れています。この#11はこの楽曲のキーにない音のため、かなり浮遊感のある特徴的なサウンドになります。いわゆるリディアンのサウンド**で、ここにもジャズ的な要素が強く感じられます。
- 7小節目: A/Bを分解してF#m11/Bというコードを入れています。
- 8小節目: 9小節目のAMaj9に向かうようにドミナント7thであるE7にしています。
- 10小節目: 3拍、4拍は裏コードを使用しています。
- 13小節目: 2小節目と同じように、基本的にはそのコードのキーに基づいたダイアトニックコードを使用して、分解しています。(ハーモナイズド・ウォーキングベースライン)
- 14小節目: 13小節目の分解したコードの流れを汲んでおり、A#m7(♭5)は経過音のように滑らかにつながれていますが、AMja7の代理コードになります。
A/B=AMaj7=A#m7(♭5)という理解ですね。
4拍目の**B7(♭9)**も15小節目のEに向かうために足したV7に、オルタードテンションを足したものです。 - 13、14小節目: この2小節間では、次のコードに向かう際に裏コードを効果的に使用しています。
- 16小節目: 3拍、4拍のG#7には、#9と♭9というオルタードテンションの典型的な動きを入れています。ここも頭のC#mに戻るためのV7にした「寄り道」の形です。
最適な状況
このアプローチは、ギターデュオなど、他にコード楽器がいない編成で最も効果を発揮します。ピアノなど他にコード楽器の伴奏者がいるアンサンブルで主導権がない状態で行うと、ハーモニー同士が衝突する(喧嘩する)可能性が高いので注意が必要です。
実際にこの譜面内容を弾いてみた動画はこちらで確認できます。
これに近い発想で、実際のセッションでバッキングを使用している例はこちら。
Tomo Fujita さんと同僚のバークリーの先生、Nealさんのデュオセッションの動画です。
上記のような発想をもとに、伴奏をしている箇所が多く見られるので、こういう理論的背景を学べば、何をしているのか理解できるようになります。
内容としてはとても難しいですが、ハーモニーの可能性は一気に広がるので、是非、勉強してみてください!



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