当ブログでは何度かAIに関するトピックを取り上げていますが、それには理由があります。
日々のレッスンの中で、生徒さんから「ChatGPTにギターの練習方法を聞けばいいのでは?」「AIに質問すれば、先生いらずで上達できるんじゃないか?」と聞かれることが増えたからです。
実際にAIの進歩は指数関数的に伸びています。
もちろん、ギター練習においてもテクノロジーを活用することはとても合理的です。
僕自身も、生徒さんにDTMの操作などはAIに確認するように推奨しています。
(ChatGPTにPDFで説明書を読み込ませるなどするとより正確になるので)
しかし、以前のブログでも述べているように依然として解決していない問題もあります。
それは平均解を優先するLLMの特性によるものです。
AIが導き出す「平均解」と現場の乖離
AI(大規模言語モデル)の特性として、ネット上に存在する膨大な情報を学習し、その中から「最も確率の高い平均的な回答」を導き出します。
しかし、音楽の実践的な技術において、「多数決の平均解」が常に正解とは限りません。
例えば、「リズムの正確さと人間らしさ」についての解釈です。
ネット上の一般的な意見(つまりAIが出力しやすい平均解)を集めると、「正確すぎると機械的になり、味がなくなる」「人間らしさとは、少しのズレやルーズさから生まれる」といった言説が多く見受けられます。
しかし、実際の現場におけるトッププレイヤーたちの知見は異なります。
彼らは一様に「正確さ」を極めて重視しています。
「正確だと味がなくなる」は本当か?
世界で最も多くのレコーディングに参加しているドラマーの一人、スティーブ・ガッドは、クリック(メトロノーム)に対して完璧に「lock in(同期)」するための努力を重ねています。
“If you can lock that in, then you can build the Empire State Building on top of it”(ロックインできれば、その上に何でも積み上げられる)
彼自身がそう語るように、寸分違わぬ正確な基盤があるからこそ、その上に深いグルーヴを乗せることができるのです。
シンプルな4分音符を叩くだけでスタンディング・オベーションが起きるのは、その「正確さの質」が極めて高いからです。ヴィニー・カリウタやデイヴ・ウェックルといったトップ層も同様に、メトロノームを活用して正確さを磨き抜き、自分の音の配置を完全にコントロールしています。
つまり、本物の人間らしさやグルーヴは「意図しないズレ」から生まれるのではなく、「自分がイメージした位置で完璧に弾けるようになった結果」として立ち現れるものです。タッチ、音の粒立ち、間のニュアンスは、正確さを突き詰めた先に宿ります。
100万人の平均値より、1人の確かな知見
「正確だと味がなくなる」という意見は、現場の深い経験を持たない層による混同が含まれた一般論に過ぎません。しかし、情報量として多数派であるため、AIはこれを「正解」として提示しやすくなります。
100万人分の「なんとなくの意見」を平均化したものと、1人の優れたプレイヤーが身体で知っている「真理」の間には、明確な差が存在します。
「AIに習っても一緒」という考えは、このAIが提示する「平均解」に引っかかっている状態だと言えます。
下北沢のVitamin Studioで僕が直接お伝えしているのは、この「平均化されない、現場の生きた知見」です。
AIツールの価値を否定するものではありません。メトロノーム練習も無駄にせず、ちゃんと活かします。
ただ、ネットの平均解からはこぼれ落ちてしまう「正確に弾くことの本当の価値」と、それが「グルーヴを生むメカニズム」を、人間の目と耳を通じて共有し、共にクオリティを上げていくことに、対面レッスンの本質的な意義があると考えています。
Vitamin Studioでは、現場の知見に基づいたレッスンを行っています。
「実際のところ必要とされる技術は何か?」「ネットの情報だけでは行き詰まっている」という方は、ぜひ一度スタジオにお越しください。
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