Tim Pierce、Tom Bukovac、Mark Lettieri 〜アメリカのセッションギタリストから学べること

ギターレッスン上級者向け

こんばんは、Vitamin Studioの田村です。

僕はセッションミュージシャンとしての仕事を志すようになってから、同じ仕事をしている海外のギタリストたちを、意識して見るようになりました。

10代の頃はロックに没頭し、18歳頃からジャズに傾倒しました。20代はジャズのインフルエンスが強い時期です。
転機は28歳以降で、商業音楽を強く意識し、職業音楽家になりたいと考えるようになりました(この頃、セッションギタリストの古川昌義さんにスタジオワークを習っています)。

今回取り上げる3人を好きになったのは、その後のことです。
自分の仕事に直接的なヒントをくれるので今でも大好きなギタリストたちです。

  • Tim Pierce(ティム・ピアース)── ロサンゼルスを代表するセッションギタリスト。1,000枚を超えるレコードに参加
  • Tom Bukovac(トム・ブコバック)── ナッシュビルを代表するセッションギタリスト。1,200を超えるセッションに参加
  • Mark Lettieri(マーク・レティエリ)── Snarky Puppyのメンバーとして知られていますが、セッションの仕事もしている人です

3人ともYouTubeに多くの動画があり、演奏している様子やレッスンを長い尺で見ることができます。
特にTim Pierce と Tom Bukovac はYoutuberでもあるので、
是非、この後の各紹介に貼ってある動画を覗いてみてください。


一人で弾いていても、バンドのように聴こえる

彼らの演奏で最も参考にするべきは、リズムの良さだと思います。

以前、マイケル・ランドウについての記事で「クロック」の話を書きました。
デジタル上の絶対的なグリッドではなく、その場に生成される相対的なリズムの中心線のことです。

あの記事はバンド全員で共有するクロックの話でしたが、クロックは一人で弾いていても存在します

彼らの演奏がそうです。一人で弾いていてもテンポが崩れない。正確で、周期性がある。そしてその周期性が、音の置き場所だけでなくタッチにも反映されている

だから一本のギターでも、バンドのようにグルーヴして聴こえます。ビートがある。

聴いている側からすると、これは「わかりやすい」という感覚になります。周期が正確だから、次に何が来るかが予測できる。「次にこれが来るな」と思える。だから乗りやすい。

「キャッチー」の中身

Tim PierceとTom Bukovacについて言うと、何を弾いてもキャッチーです。

このキャッチーさには、いくつかの要素が混ざっていると思います。

ひとつは、リズムの良さから来るキャッチーさ。前の章で書いた周期性がそのまま効いてくる部分です。

もうひとつは、フレーズ構成のわかりやすさ。拍や小節がきちんと伝わる。シンプルで、歌心を感じる。

そして引き出しの多さ。そのジャンルに特徴的なフレーズを、非常に効果的な形で入れてくる。

結果として何が起きるかというと、来てほしいところで、来てくれる

たとえば盛り上がったところの頭、その一拍目にチョーキングをスカンと一発当てる。そこに至るまでの自然な流れがあるから、その一発が唐突ではなく必然に聴こえます。

3人それぞれについて

Tim Pierce

弾く内容が整理されている人です。
フレーズの精度が高く、本当に一発でキャッチーなものが出てくる。ポップさという意味では、ある意味で今剛さんにも通じる部分があるかもしれません。
また、自身の自宅スタジオが相当充実していて、早い段階から商業音楽のための宅録をトップクオリティにしてきた人と言えるでしょう。

Tom Bukovac

TomもTimと同じ系譜だと感じますが、よりフォーク的なアメリカンの匂いがあります。ナッシュビルの人だからでしょう。

そして音色そのものが素晴らしい。ビンテージのロックなどが好きな人にはたまらないと思います。色気がある。実際にビンテージのギターもよく弾いています。

Mark Lettieri

Markは、上の2人とは軸が違います。「何を弾いてもキャッチー」というタイプではなく、もっとファンクネオソウルやR&Bの方向の人です。現代的で、オシャレでもある。

ただ、この人もリズムが良く、本当に演奏テクニックの精度が高い。

タッチがロックを感じる

もうひとつ、彼らを聴いていて感じるのがロック的なタッチです。

ジャズのギタリストはクリーントーンが前提なので、より軽いタッチで弾きます。
それに対してTimとTomは、デフォルトの基準が強めです。
ピッキングもかなり強く弾くときがある。

そのタッチだけで、ロックの人だとわかります。

Markについては、そこまで強いというイメージはありませんが、自身のバンドではハードロックの要素も取り入れてるので、スムースな演奏の中にもそのニュアンスを感じます。

今剛さんとの違い ── バックビート

今剛さんの記事で、僕は今さんのスタイルをこう分析しました。
整理された構成力、小節のアタマを常に意識した理路整然としたフレージング、正確なピッチとリズム、機械的に聴こえない有機的な歌心。

これらは、今回の3人にも共通しています。トップのセッションミュージシャンとして必要な条件だからです。

では何が違うのか?僕はバックビートだと思います。

昔の歌謡曲をやってきた日本のスタジオミュージシャンは、バックビート的ではない人が多い。
器用に切り替えられる人も多いのですが、基本形がそこにない。
理由は単純で、日本のポップスはほとんどバックビートではないからです。

日本のポップス、特に歌謡曲の系譜が中心だった時代と言っていいでしょう。今さんのスタイルも、そこに適用されているものです。
今回あげた3人のギタリストはアメリカのギタリストですから、当然バックビートの音楽を演奏することがほとんどだと思います。

その音楽が要求しているものに合ったスタイルになっていく。
セッションギタリストとしてトップの売れっ子になるにはそういった「環境によって何が必要なのか」を常に追求する必要があるのだと思います。

セッションミュージシャンでない人にも役立つこと

ここまでセッションミュージシャンの話をしてきましたが、これはバンドをやりたい人にも役立つことだと思っています。

セッションの現場で重要視されているのは、音楽を作るうえでの基礎そのものだからです。彼らはその基礎を磨き上げ、それで多くの実績を残してきました。つまり、汎用性がある。それを踏まえて、彼らの演奏から盗むと良い要素が2つあると思っています。

ひとつは、小節と拍の自覚。
弾いている最中に「いま自分は4小節目の3拍目を弾いている」と自分で把握できているかどうか。例えば、チョーキングを5小節目の頭の1拍目でビシッと当てる=「あと何歩で頂点に達するのか」など自分の演奏しているフレーズが常に正確にマッピングされてるので音楽効果がデザインしやすいのです。
彼らのフレーズで拍や小節が伝わるのは、弾いている本人が常に拍を把握しているからでしょう。

もうひとつは、歌心。 生きたフレーズをコピーして、それが自然に歌になっていること。音の並びとして写すのではなく、歌として身体に入れる。
そのジャンルの匂いを醸し出すような音色、フレーズの呼吸というものが血肉化され、それにあったタッチとダイナミクスで演奏できること。

僕自身もこういった能力は今でも磨いている最中です。
是非、皆様もご自身のプレイをこのような観点から振り返ってみてください。


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