制作現場のコミュニケーションで心掛けていること

参加作品 - 作編曲担当

こんにちは、Vitamin Studioの田村です。
今日は抽象的ですが、音楽制作の現場でのコミュニケーションについて書いてみます。

商業音楽の現場でギタリスト、あるいは作編曲家として呼ばれるとき、僕が自分の演奏や楽曲以外で意識しているのは、チームの中での自分の立ち位置と、どこまで踏み込むかということです。

あくまで僕の中での微妙な傾向の話ですが、振り返ってみるとそういう違いがあるなと感じるので、自分なりの整理として書いてみたいと思います。

スモールチーム・経験がそこまでないチームの現場で

少人数のチーム、若手のアーティストやプレイヤー、制作の経験値がそこまで多くないチームと仕事をするときでも、基本的な姿勢は変わりません
大切なのはクライアントにバリューを出す、良い音楽に貢献すること。
しかし、自分の専門領域だけでなく、他の分野に対しても意識が働く場面があります

特に近年は、メジャーレーベルを経由せずにインディーで作品を発表したり、SNSをきっかけに広く聴かれるアーティストも増えてきました。チームが音楽制作の経験値を十分に持たないまま、作品を世に出す機会が増えているとも感じます。

たとえばミックスのバランスやマスタリングについて、僕は専門で呼ばれることはない分野ですが、商業音楽の現場をある程度こなしていると、「もしかしたら、ここがボトルネックになっていそう」と感じる瞬間があります。

ただ、これは越権行為になりかねないので、慎重にやるべきことです。
「あくまで僕個人の見解で、間違っているかもしれないんですが」という前置きをした上で、しっかりと許可を取って意見を伝えるようにしています。
実際にそれが喜ばれた経験も多くあります。

ただし、ここで気をつけているのが感性の領域です。

若いアーティストやチームと仕事をするとき、感性は時代と共に変わる部分があるので、ある程度年齢を重ねた僕の「正解」のほうが、ずれている可能性があります。
実際に、僕には無いセンスで素晴らしい結果を得た経験が何度もあります。
なので、感性の判断にはなるべく口を出さないようにすることがあります。
代わりに意識しているのは、技術面でのサポートです。
「もしかしたらここで困るかも」という箇所を少し先回りして、技術面でカバーしきれていない部分を助けるようにしています。

提案するときは、選んでもらえる状態にしたほうが良いと思っているので、複数のパターンを用意して提示することが多いです。
ただ、こうしたチームで複数提示するときは、技術的な観点での言及が多くなる気がしています

大きなチーム・経験値が豊富な現場で

逆に、大手レコード会社の制作チームや、ベテランのプロデューサー、アレンジャー、アーティスト、プレイヤーが揃った現場では、少し振る舞いが変わることが多いです。

ここで前提になるのは、向こうが先回りしている可能性が高いということです。
なので、他の分野に意見する可能性は低くなりますし、越権には特に気をつけるべき場面だと思っています。
それぞれの専門領域がより専門的であり、そこで呼ばれている意味合いが強いので、自分の領域をしっかりこなすことに集中するイメージです。

ただ、自分の領域ではアイデアはなるべく出すようにしています。スモールチームと同様に複数のパターンを用意しますが、**ここで違うのは「何として提示しているか」**だと思っています。

こうした現場では、「僕のセンスとしてはこうですね」という言い方が少し増えている気がします。
技術的な部分の判断はすでに専門の方が押さえている前提があり、そこに口出しする必要はあまりない。むしろ、ちょっとした刺激になるような提案が喜ばれることが多いと感じています。
僕のセンスがたまたま少し違う角度から重なったときに、偶然の面白さ、サプライズのような瞬間が生まれることがある。それは自分の色を素直に出した結果として起きてくれる嬉しい瞬間です。

これができる背景には、こちらが踏み込んだ提案をしても、それを受け止めてくれる度量を持っていることが多いと言えるのかもしれません。

加えて、こうした現場ではディレクションの言葉をしっかり捉える意識が強くなる気がします。
意図がはっきりしたディレクションをいただくことが多く、その言葉の中に、すでに答えが十分に含まれていることがほとんどです
その言葉を取りこぼさず、演奏内容や作編曲にしっかりと反映させるようにしています。

共通して大切にしていること

どちらの現場でも、まずは言われたことをしっかりこなすのが一番大事だと思っています。
その上で、アイデアを出すこと、選択肢を提供することも積極的にやる
出し方や意識の置き方は現場によって変わりますが、より良いものを提供したいという気持ちは、どちらの現場でも変わりません。

また、ここまで「クライアントにバリューを出す」「言われたことをこなす」と業務的な印象が強い言葉を書いてきましたが、結局は自分の感性を通っているので、勝手に自分のセンスのフィルターは働いています
商業音楽だから、魂を殺して仕事をやっている、というのとは違います。
僕は音楽家なので、そもそも自分なりの感覚が強いのです。
それを意識して殺すとか出すとかではなく、通らざるをえないものを、現場に応じて調整しながらやっているという感覚に近いです。

呼んでくれた人が「この人を呼んでよかった」と思ってもらえるように、尽力したいといつも考えています。


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僕自身はフリーランスとして活動しています(agehasprings party などエージェント契約している事務所はあります)。ご依頼は直接お受けすることができるので、事務所を介さずに企画段階からやり取りすることも可能です。
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