「セッションで自由にソロを弾けるようになりたい」
「アドリブで気持ちよく歌い上げたい」
ギターを続けていれば、誰でも一度は通る願いだと思います。
でも実際にバッキングトラックを流して弾いてみると——指が止まる、同じフレーズばかりになる、なんとなく弾いてはいるけど自分でも気持ちよくない。
そして「自分にはアドリブの才能がないのかも」と落ち込む。
レッスンの中でも、本当によく聞く悩みです。
でも、結論から言えば、アドリブができないのは才能の問題ではありません。
多くの場合、いきなりアドリブをやろうとしすぎているだけです。
この記事では、アドリブの前段階として強くおすすめしている**「自分でソロを作ってみる」**という練習について、その理由と具体的な手順を書いていきます。
そもそもアドリブとは「その場の作曲」
アドリブの本質は、リアルタイムで作曲することと同じです。コード進行という制約の中で、その場でメロディを生み出していく作業。
ということは、じっくり時間をかけて作る経験を積んでいないと、リアルタイムでは出てこなくて当然なのです。
絵を描いたことがない人にいきなり「即興で人物画を描け」と言っても無理がありますよね。
それと同じことを、私たちはアドリブに対してやろうとしてしまいがちなのです。
順番としては、まず**「ゆっくり作ってみる」**。これに尽きます。
ソロを作ることの本当の効用:自分のスタイルが生まれる
ソロを書く練習というと、多くの方は「アドリブの準備運動」「フレーズのストック作り」程度に捉えていると思います。もちろんそれも大事な側面ですが、もう一つ、もっと深い意味があります。
それは、自分のセンスでフレーズを並び替え、自分の呼吸で「知っていること」を再構築する作業になるということ。
人は誰でも、これまで聴いてきた音楽、コピーしたフレーズ、好きなプレイヤーから影響を受けたボキャブラリーを持っています。それを自分の呼吸のタイミングで並べ直す行為こそが、ソロを書くという作業の正体なんです。
つまりソロを書くことは、自分のスタイルを作るための練習でもあります。
これが習慣になっていくと、アドリブで弾いた瞬間にも「あ、これは自分の音だ」と感じられるフレーズが少しずつ増えていきます。誰かのコピーではない、自分の言葉でしゃべっている感覚です。
手順1:コピーしたフレーズを「分析」する
ソロを作る前提として、それなりにフレーズの引き出しが必要です。とは言っても、どこかで聴いたフレーズをコピーしている経験は、ある程度ギターを続けてきた方ならお持ちのはず。
まずやってほしいのは、コピーしたフレーズの分析です。
- このフレーズはどのコードに対して弾かれているのか
- どの音がコードトーンで、どの音がテンションなのか
- リズムの取り方、アクセントの位置はどうなっているのか
- どの音から始まって、どの音で着地しているのか
ただコピーして指の動きを覚えただけだと、そのフレーズはその曲の中でしか使えません。分析することで、初めて他に転用できるかどうかが見えてきます。
スケールではなく「インターバル」で分析する
ここで一つ、特に意識してほしいことがあります。
フレーズを分析するとき、「このフレーズはCメジャースケールだな」「ドリアンだな」とスケール単位で捉えただけでは、転用の幅は広がりません。それよりも、バックで鳴っているコードに対して、各音が何度(何のインターバル)になっているかで分析することをおすすめしています。
たとえば同じ「ド」の音でも、
- Cメジャーコードに対しては「ルート」
- Am7コードに対しては「♭3rd」
- F△7コードに対しては「5th」
- D7コードに対しては「♭7th」
と、コードが変わればインターバル(役割)が変わります。
スケールで覚えていると「Cメジャースケールの曲だから、このフレーズが使える」止まりですが、インターバルで把握していると「このフレーズはコードに対して 3rd→9th→1st という流れだな」と分かるので、別のキー、別の曲、別のコード進行でも同じ動きを再現できるようになります。
これが、フレーズを真の意味で「自分のもの」にしていく作業です。
具体的なインターバルの捉え方やコードトーンの分析方法は、過去記事でも詳しく書いています。
- 音楽理論の学習の基礎、ギターでインターバルやダイアトニックコードを「体得」する意味
- インターバル(度数)の身につけ方(具体的な練習方法)
- ギターの指板把握の基礎練習!コードトーンを練習しましょう
- コードトーンの練習方法〜指板把握力を鍛える〜
- アドリブ演奏に役立つスケール練習:指の形だけで覚えていませんか?
合わせて読んでみてください。
手順2:短いフレーズに切って「転用」する練習
ここがとても大事なポイントです。
コピーしたフレーズを、できるだけ短い単位に切って転用する練習をしてください。
50音、60音といった長いフレーズを丸ごと使い回そうとしても、汎用性が低いからです。
これは外国語学習にとても似ています。
英語学習で考えてみてください。長い決まりきった文章を丸暗記しても、別の場面ではほとんど使えませんよね。
「I’m sorry to bother you, but could you possibly tell me how to get to…」みたいな長い定型文を覚えても、状況が少し違えば使えない。
それより、「Could you…?」「Would you mind…?」のような短い文節を、いろんな場面で使い回せるようになる方が圧倒的に実用的です。
ソロのフレーズも全く同じ構造です。長い名フレーズを丸ごと使うのではなく、短い文節レベルに切ったフレーズを、別のコードや別の場面で転用する。
たとえば3〜4音の小さな節を一つ覚えたら、それを違うキーで弾いてみる、違うコードに当ててみる、リズムを変えてみる。この「短いフレーズの使い回し練習」を繰り返すことで、自分が実際に使える語彙が増えていきます。
長いフレーズをそのまま暗唱するのは、外国語と同じく難しい。でも短い言い回しなら、自分のものにできる。これは音楽でも言語でも変わらない原理です。
ジャズギタリストのJohn Scofieldも「短いセンテンスで練習するべきだ」と、セミナーで言っていたのを記憶しています。
手順3:実際に弾きたい楽曲で1コーラスのソロを作る
短いフレーズの転用にある程度慣れてきたら、いよいよ実際にセッションで弾いてみたい曲を選んで、1コーラスぶんのソロを作ってみましょう。
候補としては、定番曲が良いです。たとえば、
- ブルース(過去記事「ブルース・アドリブに挑戦!ペンタボックスポジション限定ソロ例」が参考になります)
- Just the Two of Us(過去記事「名手が弾くセッション定番曲のアドリブソロ」)
- Autumn Leaves
- Cissy Strut(Level1、Level2、Level3の3段階で過去記事があります)
など、コード進行が比較的シンプルで、参考音源も豊富な曲がやりやすいです。
譜面が書けなくても大丈夫|「録音しながら練る」方法
「ソロを作る」というと、譜面に書き起こさないといけないと思う方が多いのですが、そんなことは全くありません。
おすすめは、録音しながら練っていく方法です。
- バッキングトラック(YouTubeやiReal Proなど)を流すor自分で伴奏を録音する
- 何度も繰り返し弾きながら、「これいいな」と思ったフレーズが出たらそれを覚える
- 次のセクション、次のセクション、と少しずつ繋いでいく
- 通して弾けるようになったら録音して聴き返す
- 違和感がある箇所を直す
これを繰り返していくと、自然と1コーラスぶんのソロが出来上がっていきます。
このとき大事なコツが一つあります。
自分で口に出しながら、歌いながら、フレーズを作っていくことです。
ギターの上だけで指を動かしていると、どうしても「指の都合で動いた」フレーズになりがちです。
一方、自分の声で歌いながら作ると、自分の呼吸のタイミング、自分が気持ちいいと感じる間合いが、自然に反映されていきます。
これが結果的に「自分のソロ」を作る最大のコツになります。
「カッコよくしよう」と思いすぎないこと
もうひとつ、ソロを作るときの落とし穴があります。
それは、最初から「カッコいいソロにしよう」とハードルを上げすぎてしまうこと。
頭の中で名プレイヤーのソロを思い浮かべて、それと比べてしまうと、何を弾いても物足りなく感じます。そして手が止まる。
最初は驚くほどシンプルに作ってOKです。
- コードトーンを順番になぞるだけのフレーズ
- 1音だけを長く伸ばす箇所
- リズムの繰り返しだけのセクション
こういう「地味」な要素こそ、実はアドリブで最も使う引き出しです。無理に派手なフレーズを並べる必要は全くありません。
繋ぎ目を意識する|ソロは「ただのフレーズの集合」ではない
シンプルに作ることに慣れてきたら、もう一段だけ意識してほしいのが、**フレーズとフレーズの「繋ぎ目」**です。
ソロは、フレーズを並べたものではありません。フレーズとフレーズが、流れとして繋がっているものです。
- このフレーズの最後の音から、次のフレーズの最初の音にどう繋ぐか
- 一度フレーズを終わらせてから、次に入るタイミングはどこが気持ちいいか
- 静かな場所と密度の高い場所を、どう配分するか
これらを意識して練り上げたソロは、**たとえ一つひとつのフレーズが地味でも、全体として「歌っている」**ように聴こえます。
逆に、派手なフレーズを並べただけのソロは、繋ぎ目がガタガタしていて、聴いていて疲れるものになりがちです。
こうして作った1コーラスは、自分の血肉になる
自分の呼吸のタイミングで、自分のセンスで作り上げた1コーラスは、コピーしたフレーズの寄せ集めとは全く違うものになります。
自分にとって消化しやすく、体に馴染んでいる。これが大きな違いです。
そして、何度もこのソロを弾き込んでいくうちに、不思議なことが起こります。
- ソロの一部を変えても、自然に弾けるようになる
- 別の曲でも、似たような場面で同じフレーズが自然に出てくる
- バッキングトラックに合わせて、毎回少しずつ違うソロが出てくる
これがまさに、アドリブの入り口です。
「ゼロからその場で生み出す」のではなく、「自分の中にあるものを、その場で並べ替える」。これがアドリブの基本に近い感覚です。書いて作ったソロは、その「自分の中にあるもの」を整理していく作業でもあるんです。
まずはここをやって、セッションで披露してみましょう
セッションでアドリブを披露するというと、ハードルが高く感じるかもしれません。でも、
- 自分で作って何度も弾き込んだ1コーラスがある
- 短いフレーズの転用ができる
- フレーズの繋ぎ目に意識が向く
ここまで準備できていれば、もうセッションで弾いてOKの状態です。
「アドリブだから、その場で全部考えなきゃ」と思う必要はありません。プロでも、自分の中にある引き出しから組み合わせて弾いている部分は大きいです。一生懸命つくって、弾き込んだソロをそのまま披露することは、とても大きな一歩です。
そしてその経験を一回でも積めば、次は「ここを少し変えてみよう」「もう少しリズムを崩してみよう」と、自然にアドリブ的な発想が出てきます。
Vitamin Studioでは、ソロ作りのレッスンも行っています
下北沢のVitamin Studioでは、
- コピーフレーズの分析方法(コードに対するインターバルでの捉え方)
- 短いフレーズへの切り出しと転用練習
- 弾きたい曲に合わせた1コーラスソロの組み立て
- 自分の呼吸でフレーズを作るための歌う練習
- アドリブへの段階的な移行
を、生徒さん一人ひとりのレベルと弾きたい音楽に合わせてお伝えしています。
「アドリブを始めたいけど何から手をつけていいかわからない」「コピーは頑張ってきたけど、自分のソロが弾けない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
アドリブの前段階として、ソロを書いて作る練習には次のような効用があります。
- 自分のセンスで並び替えることで、自分のスタイルが育つ
- コピーフレーズを短いフレーズに切って、コードに対するインターバルで分析することで、転用の幅が広がる
- 譜面が書けなくても、録音しながら、歌いながら作れる
- シンプルに、繋ぎ目を意識して作ると、消化しやすいソロになる
- 出来上がった1コーラスを、そのままセッションで披露してみる
アドリブができないと感じている方こそ、まず一度、自分でソロを作ってみることから始めてみてください。



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