セッションでギターのバッキングをどうすればよい?『Isn’t She Lovely』のバッキングをレベル、状況別に解説

ギターレッスン上級者向け

『Isn’t She Lovely』ギターバッキング 4つのアプローチ解説

この記事ではセッションでも定番曲、スティーヴィー・ワンダーの『Isn’t She Lovely』を題材に、アンサンブルの状況や音楽的表現のレベルに応じた4種類のギターバッキング(伴奏)方法を解説します。

Contents

  1. シンプル&省スペースな伴奏
  2. 4弦ルートを中心とした基本伴奏
  3. R&B/ネオソウル的なアプローチ
  4. ジャズ的リハーモナイズ伴奏

4種類のバッキングパターンを書いた譜面(タブ譜)です。

※Arrangement & Tablature © 2025 Yuta Tamura (Vitamin Studio)
Original Music: “Isn’t She Lovely?” (Stevie Wonder)

(1) シンプル&省スペースな伴奏

奏法

主に3度と7度など、2音のみで構成された、ルート音を省略したコードを弾きます。
音の繋がりが滑らかになるよう、各コードの構成音はなるべく近い位置で押さえ、不自然な音の跳躍を避けるのがポイントです。
演奏自体は初心者でもすぐにできますが、シンプル=初心者向けという訳ではありません。

意図と効果

  • 抑えたダイナミクス:単純に音数が少ないので、その分音圧は少なく、ダイナミクス的にp: ピアノ(弱く)効果が狙いやすいです。
  • アンサンブルの調和: ピアノなど他の楽器がハーモニーを厚く演奏している場面で有効です。
    ギターが使う音数をあえて「薄く(痩せている状態に)」することで、ピアノが奏でる豊かな響き(太っている状態)とぶつからず、周波数帯域の棲み分けができてサウンド全体がスッキリします。
  • 自由度の提供: 基本的な構成音のみを提示することで、他の伴奏者にコードの音付け(テンションを加えるなど)の選択肢を委ねる、という協調的な意味合いもあります。

最適な状況

バンドなど他の楽器の役割が多い場合や、力強さを抑えて(ダイナミクス的に)演奏したい時のアプローチです。

(2) 4弦ルートを中心とした基本伴奏

奏法

コードの最も低い音(ルート)を4弦に置いたフォーム(ボイシング)で演奏します。
4弦から押さえるコードの形に慣れていないと、少し難しく感じるかもしれません。

意図と効果

  • 中間のようなダイナミクス:低音を弾いていないので音圧感は落ちるが、4声を主に扱っているので、ダイナミクス的にmp~mf: メゾピアノ〜メゾフォルテ(やや弱く~やや強く)効果が狙いやすいです。
  • 音域が重なりやすいところを避ける:6弦や5弦ルートのコードフォームは低音域が豊かですが、ピアニストやベーシストの演奏と音域が重なりがちです。
    4弦からの押さえ方を選ぶことで、意図的に低音域の重複を避け、アンサンブルの中で適切な立ち位置を確保します。
    このパターンでも、各コードの構成音は不自然な音の跳躍は避けましょう。特にトップノート(一番高い音)の動きが不自然に飛ばないよう、滑らかな連結を意識します。

最適な状況

バンドアンサンブルにおける中低域がダブつかないバッキングとして非常に重宝します。

(3) R&B/ネオソウル的なアプローチ

奏法

基本のコード弾きに、ハンマリングやプリングによるコードの装飾、3度や6度のハモリ(ダブルストップ)、右手で弦の振動を抑えながら弾くパームミュートといったR&B的なフレーズを「オカズ(フィルイン)」として加えます。
コードとフィルインを同時に演奏するので、一貫性のあるリズムで弾くことがポイントです。

意図と効果

  • ダイナミクス的に盛り上げる効果:音数が多い分、音圧は大きく、f: フォルテ(強く)効果を狙いやすいです。
  • ギターらしいフレージング。伴奏にリズミカルな中でも、メロディアスな彩りを加えることができます。
    ギターが伴奏の主役になるような華やかさが演出できます。
    ※オンコードも使用していますが、少し気に留めておきたいことがあります。
    ギターとボーカルのデュオなどでギターがオンコードを弾くことはとても効果がありますが、バンドで演奏する場合はその限りではありません。
    ギターがF#6/Eを弾いても、それより低い音域を担うベースがE以外の音を弾くと、コード全体の響きはベースの方が支配力が大きいです。

最適な状況

伴奏にギターならではの個性的な色を出したい場合、アンサンブルのスペースが空いている場合のアプローチです。

(4) ジャズ的リハーモナイズ伴奏

奏法

元のコード進行をより複雑で色彩豊かに解釈し直す「リハーモナイズ」を用いたジャズ的なアプローチです。
いわゆる「四つ切り」と言われるようなリズムで弾いていて、高度なハーモニーで楽曲の雰囲気をガラッと変えてスリリングに演出します。これにはジャズの理論が用いられています。

意図と効果

  • ダイナミクス的に盛り上げる効果:コードが頻繁に変わり、また厚いコードになっているため、音圧は大きく、f: フォルテ(強く)効果を狙いやすいです。
  • 裏コード: F#7に進む前に、そのドミナントコード(C#7)の代理であるG7を「寄り道」的に挿入します。これは♭5サブスティテューション(通称:裏コード)と呼ばれるジャズの常套句です。
  • オルタードテンション: C#m7のような解決先のコードに向かうG#7に、#5や♭9といった緊張感の非常に高い音(オルタードテンション)を加えます。この緊張感は、トップノートが「#9→♭9→解決先のコードの5th」のように滑らかに動くことで、心地よく解放されるのが「典型的」な動きです。
  • ドミナントモーションの多用: ターゲットのコードに対して、その5度上のセブンスコード(V7)を設置して解決感を強めたり(例:C#mに行く前のG#7)、さらにそれを拡張したII-V-Iという進行を組み込んだりします。

最適な状況

ギターデュオなど、他にコード楽器がいない編成で最も効果を発揮します。ピアノが伴奏者としているアンサンブルで行うとハーモニー同士がぶつかる可能性があるので、ギターが主導権を握っている場合に行いましょう。

以下は実際に(4)の要素を入れて弾いてみた動画です。※(4)の譜面と少し違うものになっていますが、後日、他の(1)~(3)の演奏例も動画で補足する予定です。
理論的に複雑なのですが、理解を深めるためにこの演奏動画の内容の記事を用意しました。
『Isn’t She Lovely』のバッキングをJazz的にリハーモナイズした演奏を理論解説

当たり前ですが、ギタリストにとってバッキングは最も重要です。
求められるバッキングはアンサンブル、状況によって常に変わります。
その状況は、楽器の編成、他の楽器のハーモニーの選択、主導権を誰が握っているか、ダイナミクスの変化などによって変わります。
それゆえに常に周りのパートに耳を傾けて、その役割、方向性を常に判断しながら自分の演奏に方針を持たせないといけないのです。
(この捉え方について 「周りの音をよく聴くとは?」で詳しく述べています。)

「セッションでギターのバッキングはどうしたらよいの?」と悩んでいる方にとって、
具体的なアプローチ方法、考え方の参考になれば幸いです!

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