下北沢の Vitamin Studio の田村です。
アドリブをしていて、
- 「転調のところが急に聞こえる」
- 「コードが変わった瞬間、フレーズがぎこちなくなる」
そんな感覚を持ったことはありませんか?
実はそれは、頭の中で指板の位置把握が追いついていないというよりも、
次のコードやキーを先取りする意識がないことが原因になっている場合があります。
そこで今回は、アドリブにおいてとても重要になる
アウフタクトのフレージングの意識について書いてみようと思います。
アウフタクトとは「入り」だけの話ではない
そもそも「アウフタクト」とは?
アウフタクト(Auftakt)とは
小節の頭(1拍目)に対して、その“前”から始まる音やフレーズのことを指します。
日本語では「弱起(じゃっき)」とも呼ばれ、
クラシックだけでなく、ポップスやジャズ、ロックでも日常的に使われている考え方です。
実際にアウフタクトと聞くと、
- 小節頭より前から音を出す
- 弱拍から入る
といった、リズム的な意味合いで説明されることが多いと思います。
もちろんそれも間違いではないのですが、本質はそこだけではありません。
大事なのは、
次に起こることを、少しだけ先に提示する
という「時間の使い方」です。
この考え方は、
- 作曲でも
- アドリブでも
まったく同じように使われます。
メロディが先に進行を引っ張る
流れるようなアドリブソロでは
- コードが変わってから音を選ぶ
というよりも、
- 次に来るコード(モード)を想定して、今のフレーズを作っている
ように感じられる場面が多くあります。
結果として、
メロディが先に進み、
コード進行が後ろからついてくる
そんな印象を受けます。
この感覚が身についてくると、転調やノンダイアトニックコードが
「切り替え」ではなく「流れ」として聞こえるようになります。
具体例:Miles Davis「So What」
この考え方が、とても分かりやすく使われている例として
Miles Davis の 「So What」 を挙げてみます。
この曲は、
- Dドリアン → E♭ドリアン
というモードチェンジを繰り返す楽曲です。
(モードについては以前のブログ「コードスケールの学習方法|丸暗記しなくても簡単にアドリブに使えるコツ 後半 (理論的補足)」 で取り上げています。)
一見シンプルに聴こえますが、マイルスのソロをよく聴くと、
最初のモードチェンジ以外、全ての箇所で「先取り」が行われているのが分かります。
① 1コーラス目・24小節目
具体的に該当箇所を取り上げてみます。
2:13~(E♭ドリアン → Dドリアン に戻るところ)
Dドリアンに戻るのは次の小節ですが、
- 3拍目あたりから
- Dドリアン側の音
(レ → ミ → ファ♯ → ソ)
がすでに使われています。
つまり、転調から戻る前に
耳はもう Dドリアンに入っているという状態です。
② 2コーラス目・16小節目
2:57~(Dドリアン → E♭ドリアン に変わるところ)
ここは特に象徴的な箇所です。
- E♭ドリアンに変わる 1拍前
- マイルスは A♭ を吹いています。
A♭は
E♭ドリアン側の音。
つまり、まだDドリアンの小節で
次のモードを先にチラッと見せている、ということになります。
この一音だけで、モードチェンジがとても自然に聞こえます。
③ 2コーラス目・24小節目
3:10~(E♭ドリアン → Dドリアン に戻るところ)
ここでも同じことが起きています。
- 3拍目から
- レ → ミ → ファ♯ → ソ
と、明確にDドリアンの音列を先取りしています。
偶然ではなく、一貫した捉え方で行われていることが分かります。
先取りすると、なぜスムーズに聞こえるのか
理由はとてもシンプルです。
人の耳は、「今鳴っている音」だけでなく、「これから起きそうな流れ」
を、無意識に予測しています。
そのため、転調した瞬間に音を切り替えるよりも
転調する少し前から準備しておくほうが、音楽として自然に感じられるのです。
感覚を掴むためのヒント(練習ではこう考える)
いきなり難しいことをする必要はありません。
まずは、
- 次のコード(モード)で
1音だけ先に使ってみる - それを
弱拍やフレーズの終わりに置く
これだけで十分です。
「So What」のマイルスも、派手なことをしているわけではありません。
“ほんの一音、ほんの数拍先取りする“
それだけです。
まとめ
今回はマイルスのソロを例に挙げましたが、ポップスやクラシックなどあらゆる音楽で通用する捉え方です。
改めて要点をまとめると
- アウフタクトは「入りのリズム」だけの話ではない
- 次に来るコードやキーを、少しだけ先に提示する効果がある
- メロディがコードを引っ張る感覚を持つと、転調は自然に聞こえやすい
アドリブで転調が苦手だと感じている場合、「当たる音を探す」よりも先に、
次に何が来るかを、先に思い浮かべる
ここから意識してみてください。
※井の頭線沿線にあるギター/作編曲教室のVitamin Studioでは、このように少し意識を変えるだけで
効果があるようなポイントをその人に合わせてお伝えしています。
是非、一度体験レッスンを受講してみてください。



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