Vitamin Studioの田村です。
セッションやバンドで使う「リードシート」や「コード譜」。
そこに A♭7(♯11) のような、少し複雑なコードが書かれていることがあります。
こういうコードを見たとき、「この音を全部、正確に押さえなければいけない」と身構えてしまう方は多いです。先日のレッスンでも、とある生徒さんがそうでした。
今回は、リードシート(コード譜)のコードをアンサンブルでどう扱うか、という話です。
結論を先に言うと、コードは「性質」で捉えると、ぐっと扱いやすくなります。
タブ譜では「弾けて」も、指板の中身は見えていない
その生徒さんとのレッスンでは、セッション定番曲「Feel Like Makin’ Love」を題材にしました。 この曲のテーマ部分のコード進行は、こんな形です。

最初にお願いしたのは、タブ譜を使わず、コード譜から自分で音の場所を探すことです。 たとえば Fm7 なら、ルートに対して 4度、5度、m3rd、m7th……と、指板の上を自分で探していく。
タブ譜を使えば、音の場所はすぐにわかります。
指も動きますし、曲も弾けます。
ただ、タブ譜は「何弦の何フレットを押さえるか」は教えてくれても、「その音が何の音なのか、ルートから何度なのか」は教えてくれません。
タブ譜だけで弾いていると、この音程を認識する力が育ちにくいのです。
自分で探す作業は、少し手間がかかります。
けれど、その手間こそが「ここがルート、ここがオクターブ」という感覚を育ててくれます。
指板の上で、音と度数と場所が一致していく。
これは、アドリブなどで思い描いた音を弾くための土台になります。
そして、この「度数で指板が見える」状態は、今回のコードを「性質」で捉えるという話ともつながっています。
リードシート(コード譜)のコードを柔軟に扱うには、いま自分が押さえている音が、ルートから見て何の音なのか――それが見えていることが前提になります。
タブ譜から離れて自分で音を探す作業は、遠回りに見えて、その土台をつくる練習なのです。
※関連記事
度数で指板を見る練習については、こちらの記事で具体的に解説しています。 👉 インターバル(度数)の身につけ方(具体的な練習方法)
コードの構成音(R・3rd・5th・7th)を指板で把握する練習は、こちらが基礎になります。 👉 ギターの指板把握の基礎練習!コードトーンを練習しましょう
コードの「性質」について
コードは、いくつかの音が積み重なってできています。
土台になるのは、ルート・3rd・5thで構成される三和音、さらに7thを足した四和音です。
このうち 3rd がメジャー(明るい響き)なのかマイナー(暗い響き)なのか、また 5th がどうなっているか――こうした構成音の組み合わせが、そのコードの基本的な性格を決めます。
この記事では、それを「性質」と呼んでいます。
なお、コードがどんな構成音でできているか、その仕組みそのものを以下の記事で解説しています。
👉コードの「骨組み」を理解する 〜3rd・5th・7th〜
ここでは「コードには、構成音で決まる基本的な性格がある」と、つかんでおいてください。
「性質」を「果物」にたとえると
このコードの話をしているとき、生徒さんは、コードを「果物のようなもの」として捉えていました。
僕も、そういう捉え方でいいと思います。
たとえば、リードシートに E♭Maj7 と書いてあるとします。 このとき、E♭メジャートライアド(E♭・G・B♭)を弾いても、実は大丈夫なことが多いのです。
E♭Maj7 は、E♭メジャートライアド に音が一つ足された形です。 土台となる「性質」は同じ。だから、ぶつかりません。
E♭Maj7 と書いてあるのを見て、「メジャーセブンスを必ず押さえなければ」と身構えなくてもいい。E♭メジャー を知っていれば、まずはそれでも演奏は成立します。
果物のたとえで言うと、こういうことです。
譜面に「いちご あまおう」と指定されている箇所では、あまおうでなく、とちおとめでも成立します。
いちごの品種でありさえすれば、その役割は果たせるというわけです。
でも、そこに「バナナ」を持ってきてはいけません。 バナナはいちごとは違う果物です。
同じ「果物」ではあっても、いちごに求められている役割は果たせない。
性質が変わってしまうからです。
「性質が同じなら交換できる」には、ルールがある
ここが、今回いちばんお伝えしたいところです。
コードには、互いに交換できるものがあります。
性質が変わらないコード同士は、入れ替えてもサウンドの傾向が保たれます。
たとえば 上記のコード譜でFm9 のところ。 Fm11(11thの入ったコード)を弾いても大丈夫です。性質は同じだからです。(※メロディなどの関係性で調和しない場合をのぞきます)
また、Fm(三和音)を弾くこともできます。Fm7の7th(E♭)を省いた形で、性質は同じです。
でも、Fm7(♭5) はいけません。 コードの基本にあたる5度が♭してしまっている。
これは性質が変わってしまうコードです。同じ「Fマイナー系」に見えても、果物でいえば別の種類になってしまう。
つまり、こういうことです。
コードは、ルールに基づいてのみ、変えてよい。
「複雑なコードは崩していい」という話ではありません。 「適当でいい」という話でも、まったくありません。
どのコードとどのコードが交換できるのか。それは、他にもダイアトニックコードや代理コードの仕組みを理解して、初めて判断できます。性質を保ったまま変えるには、理論の知識が必要なのです。
理論を知っているからこそ、アンサンブルの中で柔軟になれる。
順番が逆ではないか、と思われる人もありますが、僕はそう考えて理論のレッスンをしています。
リードシート(コード譜)は「全員が全部弾く」ための譜面ではない
もう一つ、アンサンブルの話をします。
リードシートに A♭7(♯11) と書いてあったとします。 バンドでこれを演奏するとき、メンバー全員がその ♯11 の音を弾く必要は、実はありません。
♯11 の音は、キーボードが弾いてもいい。ギターが弾いてもいい。 誰かが鳴らしていれば、響きとしては成立します。
バンドのリーダーがリードシートを用意するとき、必要な情報はひとまず全部書き込みます。でも、書いてあるからといって、その通りに全員が押さえるわけではないのです。
セッションでは、その場でやり取りしながら決めていきます。 「ギター、そこ ♯11 弾いてくれる?」というような会話が、アンサンブルでは普通に交わされます。
だからこそ、自分が今どの音を担当しているのか、その音はコードの中で何なのか――それがわかっていることが大事になります。リードシートの文字をなぞるだけでは、この判断はできません。
ジャズなどでは、5度を省いて軽くすることもよくあります。 これも「性質を保ったまま、何を鳴らして何を省くか」を判断しているわけです。
まとめ
リードシート(コード譜)のコードは、「そのまま全部、正確に」押さえるためのものではありません。
- コードは「性質」で捉える
- 性質が同じコードは、交換できる(例:
E♭Maj7↔E♭(トライアド)、Fm9 ↔ Fm11) - ただし
Fm7(♭5)のように、性質が変わるものはいけない - 「ルールに基づいてのみ、変えてよい」――そのルールが理論
複雑なコードを見て身構えてしまう方は、まず、そのコードの「性質」が何かを考えてみてください。
そして、その判断ができるようになるための土台が、コードトーンと度数の理解です。地道な作業ですが、ここが見えてくると、演奏がずっと自由になります。
もし、「基本の性質となるコードのフォーム」を指板上で瞬時に見つけるのが苦手な場合は、基礎的なバレーコードの仕組みを以下の記事で整理し直すことをお勧めします。
👉 【初心者向け】「コードブックは不要!」必要最低限の知識でどんなコード進行も直ぐに弾ける方法
Vitamin Studioでは、こうした内容を生徒さんの状況に合わせてレッスンしています。
気になる方は、お気軽にお問い合わせください。



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