ギタリスト・今剛の凄さについての個人的考察
セッションミュージシャンとしての仕事もしてきた僕は、当然ながら、その世界のトップギタリストたちに強い興味を持っています。
実際に、僕自身もトップギタリストの一人である古川昌義さんに師事した経験があります(そのことについては、また別の機会にお話しできればと思います)。
これまで現場で出会った大先輩方に「今までで誰が一番すごかったですか?」と尋ねる機会があると、必ずと言っていいほど名前が挙がるのが、ギタリストの「今剛」さんです。
今回、改めていくつかの演奏の音を拾いながら、僕なりに彼の凄さについて考えてみました。
僕自身は今剛さんにお会いしたことはなく、今さんの熱心な音源コレクターでも、機材研究家でもありません。
この記事はあくまで、実際の演奏をコピーし、自身のセッション仕事に活かせる部分はどこかを考えてみた、自分なりの考察です。
以下、私がyoutubeに上げているギターソロのカバー動画です。(タブ譜がついていないものもありますが、そのうち差し替えようとは思っています。ご了承ください。)
傘がない/井上陽水/今剛 ギターソロ (2007 RSR Live ver.)#タブ譜つき
氷の世界 / 井上陽水/今剛 ギターソロ (Live ver.)
みずいろの雨 /八神純子/今剛 ギターソロ (TV収録 ver.)
スタジオミュージシャン=何でも屋ではない、ギタリストとしてのスタイル
スタジオミュージシャンという言葉から、一般的には「どんな要求にも器用に応える職人」というイメージを持つことがあります。
それは時として、プレイが匿名的になり、誰による演奏なのか分からなくなる、という意味合いも含まれます。
しかし、今剛さんのプレイを聴いていると、そのイメージはなく「一聴したら今剛だとわかる」強い個性を感じずにはいられません。
以前、僕が伊藤銀次さんのバックバンドを務めさせていただいた際に伺ったエピソードによると、今さんは「〇〇が弾くギターみたいに弾いて」といった安易な模倣の指示を、あまり良しとしなかったそうです。
そこからは、常に自身のサウンドで応えようとする、ギタリストとしての強い矜持が窺えた気がします。
実際によく演奏を聴いてみると、彼のプレイの多様性は、スタイルを次々と変えるというより、彼自身のスタイルが内包する表現の幅が非常に広いため、結果として多くの楽曲に「今剛らしさ」を保ったまま対応できた、ということではないでしょうか。
彼のスタイルから感じ取れる「合理的な方程式」
そのスタイルの根幹には、職人としての本質を突き詰めた結果、**「日本のポップスにおける、ある種の合理的な方程式」**のようなものが感じられます。 あくまで僕個人の分析ですが、それは以下のような要素で成り立っているように思えるのです。
- どんな歌にも寄り添える、シンプルなフレーズ
- 明確に整理された構成力。小節のアタマなどを常に意識した、理路整然としたフレージング
- ギターソロにおける、はっきりとした起承転結のあるストーリー展開
- 寸分の狂いもない、正確なピッチとリズム
- 機械的には聴こえない、有機的な歌心。巧みなスライドのスピードコントロールや、タメを効かせたチョーキングなどグリッド的ではなく、曲線を感じさせる歌い方
- 正確でありながら硬さを感じさせない、滑らかなレガート。ハンマリング、プリング、スライドなどを効果的に多用
- ピッキングのバイト感を生かした、ロック的で分かりやすい「エレキギターの美味しさ」の強調(そのバイト感には、コンプレッサーが効果的に使われている印象です。)
- ボリュームペダルも併用した、緻密な音量コントロールとダイナミクス
ただ仕事をこなすのではなく「音楽への探究心」
作編曲家の山川恵津子さんから僕が伺ったエピソードの一端を紹介します。
今さんはギターソロの収録の際に完璧なファーストテイクの後でも、「ねぇ、ハモってもいい?」とさらにソロパートにハーモニーを重ねたがることがあったそうです。
(余談ですが、「普通はファーストテイクで終わるでしょ?」と尋ねられたとき、僕は頷くことができませんでしたが……)
僕にとってこのエピソードは、彼の尽きることのない職人的な探究心と、楽曲をより豊かにしたいという深い愛情を示唆しているように感じられます。
おわりに
こうしたことを考えると、今剛さんが長年にわたりトップセッションギタリストとして君臨してきた理由が、改めてよくわかります。
これまで今剛さんにあまり興味がなかったという方も、一度そのプレイを研究してみると、彼の持つ合理的な技術や視点から、多くのことを学べるのではないかと思います。
Vitamin Studioではこの記事で触れたような分析や奏法をレッスンでより深く掘り下げています。
ご興味のある方は是非、お問い合わせください。
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また、他のセッションギタリストについても記事を書いていく予定です。
是非、ご覧ください。
→今井美樹「幸せになりたい」田中義人ギターソロを弾いてみた【動画タブ譜つき】



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