先日、レッスン受講者の方から相談を受けました。
「自分のギターの音がこもる。低域が出すぎている気がして」
よくある悩みです。ライブでも宅録でも、「なんか音が抜けない」は多くの人が一度は感じることではないでしょうか。
音作りの前にプレイ自体も大きく影響しているのは間違いありませんが、今回は機材面での音作りということに焦点を当ててお話ししたいと思います。
まず前提として——どんな音を目指すか
音作りに絶対的な正解はありません。ただ、考えるべき基本要素はあります。
今回のリファレンスはArt-Schoolの楽曲。
シングルコイル系のサウンドが基準です。「その音に近づけたい」という前提で検証をスタートしました。
ライブで普通にバンドをやる場合、ギターの音が細くてしょぼいと感じるのはほぼ全員が嫌なはずです。
なので、安易に削る方向で解決しようとするのは危険です。まずその前提を共有した上で進めます。
耳のイメージと、実際は違った
最初に実際ギターを弾かせてもらった時の印象では、「200Hzあたりが膨らんでいるかもしれない」と感じました。
たしかにこの音でカッティングをやると重たく感じるという意見が理解できます。
検証するためにProtoolsに録音してみました。
Sonnox Claroというアナライザー付きEQを開いてみると、話が変わりました。
100~200Hzにも原因はありましたが、最も大きかったのは5kHzが極端に落ちていたことでした。
低域が出すぎているように聴こえていたのは、高域の抜けが足りなかったせいでもあったのです。
僕の耳で判断したイメージと、データで見えたものは少し違っていました。
なるべくデータでも可視化することで、適切に状態を把握することができると改めて感じました。
今回の検証用機材と録音環境
使用マイクはSM57、マイクプリはオーディオI/OのFocusrite Red 16の内蔵マイクプリを使いました。
できるだけ色付けを薄くして、素材の特性を正確に見るための選択です。
アンプはPRS AMP30(コンボ)。このアンプについては別途記事にまとめていますので、そちらもご参照ください。→PRS / Fargen アンプレビュー
実際にはどのマイクプリにも個性はありますが、検証用途としてはこれで十分です。
ライブやリハスタでは、部屋の響きやPAによって音は大きく変わります。「スタジオで録ったら印象が違う」は当然起きることです。だからこそ、まず素材の状態を正確に把握することが大事だと考えています。
Fender Pawn Shop Offset Special vs ST——比較して見えたこと
比較として使った僕のギターは、Stratocaster / Psychederhythm(サイケデリズム)、動画内ではSTと表記します。
スッキリした音で、今どきのJ-popにも馴染みやすい。ピッチの良さと整った感じがありながら、ストラトらしさもある一本です。
一方、生徒さんのギターはFender Pawn Shop Offset Specialという珍しいギター。
ストラトキャスターの上半身とジャズマスターのオフセットされた下半身を組み合わせた独自形状、アルダーのセミホロウ構造にFホールあり。見た目はジャズマスター用ピックアップに見えますが、実際はJZHBハムバッキング×2が搭載されています。
僕も「ハムですか?」と確認していたくらい、外観から判断しにくい機種です。
(動画内ではJMと表記)
今回のリファレンスはシングルコイル系のサウンドが基準です。
ハムバッカー搭載のセミホロウという時点で、そもそもの音の方向性が異なります。
EQで追い込む前に、自分のギターのピックアップが何かを把握しておくことは、音作りの入り口として大事な確認です。
STとJMを並べてClaroで比較することで、特性の違いが視覚的にわかりやすくなりました。動画でご確認ください。
「抜け感=高域を上げる」ではない
試しに5kHzを持ち上げてみたら、音の方向性が変わりました。
決してSTの音そのままとは言えないのですが、シングルコイルの要素が少し足されたような音質になっています。
ただ、ここで注意があります。
高域を上げれば抜けるというのは、単純化しすぎです。むやみに高域だけ上げると音が細くなります。
細い音が正解のパートもありますが、太く抜けさせたい場合は別のアプローチが必要です。
さらに言うと、バンドになると話がまた変わります。他の楽器が入ることで、単体で聴いていたときとは音の印象が変わります。アンサンブル全体の中でどう聴こえるかが、最終的な基準です。
「抜け感」はギター単体の問題ではなく、全体像の中で考えるものです。
現実的な解決策
アンプのEQで調整しようとすると、帯域が広すぎて繊細な操作がしにくいです。3大アンプと呼ばれるような定番機種(マーシャル、フェンダー、Vox)はその傾向が強く、帯域を極端に削ろうとするとバランスが崩れやすくなります。
ギターを変えずにこもりを解決するなら、BOSSのGE-7のようなグラフィックEQを挟み、細かく調整するのが現実的な選択肢のひとつです。
また、録音前提であればミックスでEQ処理するという考え方もあります。
アンプシミュレーターを使用する場合もEQセクションが別途弄れることが多いので、調整しやすいです。
ただし、用途に合わせた音作りを先に意識することで、EQでごそっと削ったり、足したりする必要がそもそもなくなることが多いです。
やはりできる限り、素材から音を詰めていくことがEQの位相の問題など起こらずに良い音にストレートに辿り着けます。
まとめ
- こもる原因は一箇所とは限らない。今回最も大きかったのは5kHzだった
- 耳のイメージとアナライザーのデータの両方で検証した方が正確
- 可視化することで仮説が立てやすくなる
- 自分のギターのピックアップの種類を把握しておくなど、音を構成する前提を調べておく
- 「抜け感=高域を上げる」は単純化しすぎ
- アンサンブル全体の中でどう聴こえるかが最終的な基準
- 解決策は、ライブor録音など状況次第によってチョイスが変わる
音作りの問題は、原因の切り分けから始まります。耳とデータを使いながら探っていくことが、客観的な正解に辿り着けると考えています。
こういった検証、Vitamin Studioのレッスンでできます。
録音して、アナライザーで見て、EQで試行錯誤してみる。自分の音の問題を「見える状態」にしながら一緒に探っていきます。
「なんかこもる」「バンドで埋もれる」そんな悩みがある方は、ぜひ一度来てみてください。
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