こんにちは、Vitamin Studioの田村です。
音楽を教えるとき、僕が一番大切にしているのは技術の習得だけではありません。
その先にある、その人らしい感覚や個性をどう育てるか。
AI時代を迎えて、その思いはより強くなっています。
少し長くなりますが、音楽教育の方針として読んでもらえたら嬉しいです。
■ AIチャットで壁打ち、人生を見直した
2024年にチャットAIを使い始め、2025年の年末年始には壁打ち相手として深く使い込むようになりました。
最初は「便利なツールが出たな」という感覚でした。
でも使えば使うほど、これは効率化の話じゃないと気づいていきます。
論理的思考、知識整理、文章生成——
「人間の強み」だと思っていた領域に、AIが急速に入り込んでいる。
そのとき、はっきり思いました。
商業音楽の作られ方が変わる。
そして、音楽を教えることの意味そのものが変わる。
僕は長年に渡り、演奏や作編曲を中心にレッスンでも生計を立ててきましたが、変わらないことがリスクだと悟ったのです。
この確信が、移転の決め手になりました。
■ 小さなスタジオを構えて、5月で1年
2025年3月、下北沢に拠点を構えました。
制作と対面レッスンのためのプライベートスタジオです。
2026年5月でちょうど1年。
今年はレッスンという枠を少し越えて、ワークショップや他分野の方とのコラボレーションなど、コミュニティ的な広がりを形にしていく予定です。
この構想は、移転時点ですでに事業計画書に書いていました。
後付けではなく、最初から見据えていた方向性です。
■ 「論理や知識」の希少価値が、静かに下がっている
少し大きな話をします。
これまで経済的に価値が高かったのは、知識を多く持つこと、論理的に整理できることでした。
でも今、その構図が変わりつつあります。
AIは検索より速く、場合によっては人間より正確に答えを出す。
知識そのものの希少性は、確実に下がっています。
では、これから価値が上がるのは何か。
僕が行き着いたのは、「何を感じるか」「何を美しいと思うか」という、その人固有の感覚です。
哲学的な言葉で言えば「クオリア」。
赤を見たときの赤さ、音楽を聴いたときの体の震え。
これは完全にはデータ化できない。体験した本人にしか所有できない領域です。
■ 商業音楽の基準を土台に、その先へ
Vitamin Studioのレッスンでは、まず商業音楽の現場で通用する基準をしっかり教えます。
効率の良い練習方法、音の作り方、アンサンブルの中での立ち居振る舞い——
現場で培ってきたことを、できるだけ具体的に伝えることが僕の役割です。
ただ、それはあくまで土台です。
音楽は商業的な枠を超えた、文化そのものでもあります。
試行錯誤する時間、音を探して迷う過程、うまくいかない摩擦——
そういう時間の中にこそ、その人らしい感覚や個性が育まれると思っています。
特にお子さんをお預かりしてレッスンを担当する場合、それは顕著です。
手探りで音を探している時間を、僕は大切に見守ります。
形になったとき——その良さを生理的に感じ取ったとき、自然と出てきます。
「いい!」「Yeah!」って感じで。
それは評価ではなく、その人の発見に立ち会っている感覚です。
■ なぜ、下北沢だったのか
場所選びも、偶然ではありません。
小田急線の再開発が完了していく過程で、世田谷代田から下北沢へとつながる緑道、BONUS TRACK周辺の空気感を見たとき、強く感じたことがありました。
個性、手触り、リアルな体験価値を大切にしている地域だということ。
そして同時に思いました。
「自分がユーザーだったら、こういう場所に通いたい」
効率だけではない。少し遠回りでも、歩いて来たくなる場所。
AI時代にあえてリアルで会う意味を持たせるなら、この文化圏に拠点を置くのが自然でした。
Vitamin Studioが大切にしていること
現場で通用する技術と、その人らしい表現の可能性。
その両方を大切にしています。
AIが答えを出し続ける世界で、「自分はこう感じた」という軸を持つこと。
Vitamin Studioは、その土台を育てる場所でありたいと思っています。
■ 次のステージへ
スタジオを構えて、5月で1年。
効率よく上達できる場所であることはもちろん——ただ速く正解に辿り着くだけでなく、自分の感覚と出会える場所へ。
それが、現時点でのVitamin Studioの答えです。
“There’s no single right answer in music. I’m here to help you find your own sound.”


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