Kemperと実機アンプのマイク録音、そしてOXの立ち位置を考える

ギターレッスン中級者向け

エレキギターにおけるアンプの役割

先日の記事では「鳴るギター」について考えましたが、今回はその延長でアンプについて整理してみたいと思います。
特に最近の現場では Kemper(Kemper Profiling Amplifier) や OX(Universal Audio OX Amp Top Box) といった便利な機材が広く使われています。
一方で、やはり真空管アンプの魅力も色褪せることはありません。ここでは、現場での実用性と弾き手としての感覚の両方から、改めて考えてみます。

Kemperを使う理由(商業音楽での実用性)

私自身、商業音楽やポップスの制作現場ではKemperを選ぶことが多いです。その理由はとてもシンプルです。

  • リテイクが容易:どのテイクでもまったく同じ音が再現できる。
  • ブレがない:真空管アンプのように電圧やコンディションに左右されない。
  • 作業スピードが早い:短納期・大量の修正が求められる現場では圧倒的に有利。
  • ノイズ処理などトーンの整形が予めしやすい:エレキギターのノイズの問題も簡単に解決できる。

実際に、ヒットチャート上位に入るような大規模なプロジェクトでも、ライン納品でKemperを使うことは少なくありません。いつでも安定して同じクオリティを提供できる、現場にとっての安心感があります。

ただし、Kemperにもキャラクターがあります。私の感覚では、

  • 軽くコンプがかかっているようなまとまり感がある(実際にコンプをかけていなくても)。
  • 低域から高域までのレンジがやや狭く感じる。

そのため、ギターがメインで生々しさを出したいレコーディングでは使わないことが多いです。
それでも、音の密度を少しでも上げたい時は、Empirical LabsのコンプレッサーDistressor EL8をほとんどリダクションせずに通して熱量を上げています。

実機アンプ+マイク録音の魅力

ではなぜ、Kemperだけで完結しないのか。それは、実機アンプ+マイク録音でしか得られない体験があるからです。

  • 情報密度の濃さ:倍音の広がり、空気感、ランダムな揺らぎを含む。
  • 弾き手の高揚感:アンプが体を通して鳴っている実感。
  • 唯一無二の音:その場限りのサウンドが録れる。
  • アナログサウンド:レコーディングの醍醐味ではあるが、マイクやマイクプリなどの機材、セッティング時間、再現性の確保など、コストが最もかかりやすい方法でもある。

これはいわば「お店のラーメン」です。コンビニのラーメンがいくら美味しく進化しても、店舗で食べるラーメンにはかなわない情報密度と感動がある。
真空管アンプは重くて音も大きく、不便ではありますが、やっぱり無意味ではなく、音の質感としての魅力がいまだにあります。

もし自分の作品、つまり時間と予算に制約がなく、自分のこだわりで選べるなら、私はメインのギターパートはやはり実機アンプでマイク録音したいと思います。

OXの立ち位置

Universal Audioの OX Amp Top Box も、現場ではよく使われる機材です。

  • 利便性が高い:Kemperよりも「生々しい」ライン録音ができる。ただし、真空管アンプ特有の不安定さも反映される。
  • 個性の再現性:実機アンプをベースにしているのでキャラクターは豊か。
  • 情報密度の高さ:非常に高レベル。ただし「マイク録音の空気感」までは完全に再現しきれない。

私の印象では、OXで録ると「スタジオでマイク録音した感じ」よりも、前に張り付いたようなダイレクト感が出ます。
これを好む人も多く、用途によってはKemper、むしろ実機のマイク録音より「良い音とされるケースもあります。
これは「高級宅配麺」や「実店舗のお持ち帰りの麺」に近いイメージです。店舗での体験には及ばなくても、手軽に非常に高いレベルの味(音)を楽しめる。


ToneXやQuad Cortexについて

近年は Neural DSP Quad CortexIK Multimedia ToneX などの新世代機材も登場し、注目されています。私自身試しましたが、正直に言うと以下のような印象を持ちました。

  • Kemperよりもレンジが広く、解像度は高い。
  • 総じて「音質的に良い」と思わせる部分がある。
  • ただし、生々しさ=実機と完全に同じ、とは感じない。
  • Quadは特に「ツルッ」と整いすぎた質感を持ち、私にはやや物足りなく感じる。ただし総じてKemperより解像度が高い印象はあり、現代的で洗練されたサウンドを求める人には好まれるかもしれません。
  • ToneXもKemperほどキャラクターが残らず、便利だが「生々しい」とは言い切れない。

つまり、最新機種が「ハイファイで解像度が高い」のは事実ですが、楽器的な手触りやキャラクターの自然さではKemperにまだ魅力が残っていると感じます。だからこそ、今でもKemperは現場で根強く使われ続けているのだと思います。

まとめ

  • Kemper:現場での安心感、リテイクの容易さ、速さ。
  • OX+実機アンプ:生々しさと手軽さのバランス。
  • 実機アンプ+マイク録音:唯一無二の体験、情報密度の濃さ。

いずれも役割が違い、どれが一番というものではありません。商業音楽の現場では合理性と再現性を重視してKemperを使い、こだわり抜いた作品や感情を込めたい場面では実機を選ぶ。そしてその中間の便利さを求めるならOXが活躍する。

もちろん、そもそもライン録音が適切な現場=打ち込みメインのオケへの馴染み、ノイズの少なさが有利なこともあります。

まさに「用途に応じての使い分け」こそが、現代のギタリストに求められる判断なのだと思います。

また、Vitamin Studioのエレキギターのレッスンでは、しっかりとギターアンプを鳴らせる環境になっています。
アンプを使った練習の重要性については、以前の記事「エレキギターはアンプを使って練習しないとダメ?生音練習の落とし穴、ミュートをチェック!」でも詳しく解説していますので、合わせて参考にしてください。

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